大気中の「パントエア菌=LPS」(リポ多糖)が免疫力を強化してくれる?

ゆとりは脳の中だけでなく、身体が感じるものです。それは心理的なものにとどまらず、空間全体が関わっています。

この空間には、無数の菌やウイルスが存在しています。空間だけでなく、田や畑で栽培されている植物にも様々な菌が共生しています。

その一つであるパントエア菌という菌を知っていますか? 

穀類、果物、野菜などを食べるとこの菌も一緒に取り込まれ、免疫細胞であるマクロファージが活性化することがわかってきました。植物性の食材をしっかり摂るだけで免疫力は整えられるのです。

なぜパントエア菌にマクロファージが反応するのでしょうか? その秘密は、この菌の細胞膜を構成するLPS(リポ多糖)という成分にあります。

体内に菌が侵入してくると、マクロファージがLPSに反応するように免疫の働きがセットされているのです。

正確に言えば、マクロファージに限らず、全身の細胞にこのパターン認識の機能が備わっています。そのため体内に異物が侵入してくると、一つ一つの細胞に備わったセンサー(TLR4)が真っ先に反応し、炎症物質を出して排除します。

通常、免疫というと異物をからめとる抗体の働きが重視されますが、抗体を作るのには一定の時間がかかります。

大火事になったら消防車も必要ですが、そうなる前に火元を管理し、火事を防いでいるとイメージすればいいかもしれません。

逆に言えば、このプロセスを省くといきなり消防車に頼らなくてはなりません。
炎上=炎症のレベルも上がり、体にも負担がかかるでしょう。お気づきかもしれませんが、それが病気と呼ばれる状態です。

こうした初動時の免疫の反応は「自然免疫」と呼ばれ、体に備わった防御機能の土台にもなっています。

つまり、自然免疫がしっかり働いていれば、異物の処理に初期段階で対処でき、病気にかかりにくくなります。

もっと言えば、丈夫な人はこの自然免疫が働いているわけです。ここに、食事の話を重ね合わせると何が見えてくるでしょうか?

パントエア菌は穀類、果物、野菜などに共生していると言いました。

つまり、玄米のごはんに味噌汁、根菜の煮物などを食べると、ごく自然にパントエア菌=LPSが取り込めるということです。

それだけでも自然免疫は活性化しやすくなりますが、味噌に含まれる乳酸菌にもLPSが備わっています。

しかも、LPSは菌の体の成分(菌体成分)であるため、生きていても死んでいても、同じように自然免疫を活性化させてくれます。

ヨーグルトのような非加熱の 発酵食品でなくても、つまり、生きた菌が腸まで届かなくても、味噌汁を飲むだけで免疫が活性化されるのです。

玄米に含まれる食物繊維、根菜に含まれるオリゴ糖は腸内細菌のエサになりますから、相乗作用で腸の健康が整います。まさに植物と微生物のコラボレーションで健康の基礎が作られるということでしょう。


前置きが少し長くなってしまいましたが、ここで大事なのは、こうした食材を育んできた空間に目を向けることです。

食べ物は単独で存在しているわけではなく、風土の中で生み出され、それを食べる人も風土の中に生きています。菌や植物を媒介にしてそのつながりが保たれ、心地よさを生み出してくれているのです。

体にいいものを摂っているのに心地よさが感じられないとしたら、それは食べ物の栄養だけを見ているからでしょう。

なにしろ、菌は空気中にもたくさん存在しています。 コンクリートで囲まれた無機質な空間では自然免疫は働きにくく、その分、心地よい状態をキープするのが難しいかもしれません。 そこで菓子パンやカップ麺ばかり食べる生活を送っていたら、LPSも食物繊維も取り込めず、体調も崩れていくでしょう。

こうした話を栄養不足や不摂生の問題としてとらえるのではなく、「空間の中での自分のあり方」につなげてください。

自然免疫が活性化するということは、「いまいる空間の中で心地よく生きられている状態」と重なります。

たとえば、都心の無機質な空間でマシーンを使って汗を流し、プロテインを飲む ……そうやって筋力や持久力がつけられたとしても、こうした意味での「免疫力」がつくとは限らないでしょう。

人によっては、体を鍛えているはずなのに風邪をひきやすかったり、どこかもろいところもあるかもしれません。
人工的な環境では、自然免疫が活性化する条件が整いにくいからです。

体の内側の環境を整え、五感が磨かれていくにつれ、自然免疫が働きやすい心地よい空間を自然と求めるようになります。 心地よい空間のほうがコンディションが整い、能力が発揮しやすいことを実感する機会も増えるでしょう。

その意味では、生活の拠点を自然の多い空間に移したほうが自然免疫は活性化し、病気に対する耐性はつきやすくなると言えます。

いきなり自然に飛び込めないという人は、まず毎日の食事を見直していきましょう。

ごはんと味噌汁くらい毎日食べているという人は、素材の一つ一つを吟味し直し、少しずつ質を高めていけば、自然免疫の活性度はより高まるはずです。

自分は自然の一部であり、目には見えない菌やウイルスなどを介してつねに関係性を保っています。言い換えれば、どんな関係性を結ぶかによって、心身の健康レベルが変わってくるということです。

いま問題になっているコロナウイルスもこうした自然の一部であって、ただ排除すれば病気にならない(発症しない)という話ではないでしょう。

というより、原理的に排除というのは無理な話です。

「共生」という言葉の意味をここでもう一度しっかりととらえ直し、免疫を強化する方向へ生き方をシフトチェンジしていきましょう。

広大無変な共生空間の一隅に「私」は存在し、その振る舞いは取り巻く世界全体に影響を与えています。「見えない敵」と闘うかどうか、そもそも敵とみなすべきかどうかも含め、物の見方を再点検することが、現状の閉塞を打破するカギになります。

そう、世界の中心に「自分」がいる。自分が自分のあり方を決め、結局のところ、それが一人一人の健康の土台になっているのです。

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