「ルサンチマンをどう突き抜けるか?」

今回のテーマは、
「ルサンチマンをどう突き抜けるか?」。

10代の終わり頃、手塚治虫の長編にハマって、
過去の作品から最新のものまで、いろいろと読みあさっていました。

ライフワークとなった『火の鳥』、『ブッダ』はもちろん、
晩年期の『陽だまりの樹』『アドルフに告ぐ』など。。。

手塚治虫というと、
日本の漫画の礎をつくった神様のように思われていますが、
その本領は稀代のストーリーテラーとして、
クオリティーの高い物語を次々と量産していったところ。

実際、手塚先生の描く物語は面白い。引き込まれる。

でも、読後にちょっと気持ちが暗くなるような、なんとも言えない違和感があり。。。
なぜかなと思いつつ、答えがわからないでいたのですが、
ある時、とても衝撃的な作品と出会いました。

タイトルは『石の花』

著者は坂口尚(ひさし)という
まったく聞いたことのない名前でしたが。。。

調べてみると、手塚治虫のつくったアニメ会社
「虫プロ」のアニメーター出身。

手塚治虫が天才と恐れたという、
繊細な、センスあふれるタッチにまず目を奪われましたが、
それ以上に驚いたのは作品の世界観です。

物語の舞台は、第二次世界大戦中のユーゴスラビア。

戦争をテーマにした長編作品であるわけですが、
カギになったのはタイトルです。

クリロとフィーという二人の主人公は、
戦争に巻き込まれる直前、担任になったばかりの若い教師に連れられ、
故郷の古い鍾乳洞を訪れます。

そこで、洞窟の鍾乳石のつらなりが、
まるでたくさんの花が咲き誇っているように目に映った瞬間、

「まるで石でできた花のようだ」

とため息が出ます。そう、たしかに石の花に見える。
でも、実際には石の花じゃない。。。

「花に見ているのは僕たちのまなざしなんだよ」

物語は、様々な試練に立ち向かう二人が、
先生の発したこの言葉を繰り返し問いかける形で進んでいきます。

「戦争さえなければもっと幸せに暮らせていたんだ」
「人を殺さず、友達も死なないで済んだんだ」

この物語に驚かされたのは、
こうした負の思いを突き抜け、主人公が「まなざし」に気づく。。。
そうしたたましいの成長を描いていた点です。

「まなざし」とはなにか?

世界があって、そのなかに自分がいるのではなく、 自分が見ているから世界がある。

坂口さんはそのような価値の転換、パラダイムシフトを、
物語を通じて描こうとしたのでしょう。

そう。外側ではなく内側に、
この世界を動かしている「力の源泉」がある。。。

それはまさに、手塚作品では描き切れていなかった世界像。
その卓越したストーリーテリングに引き込まれつつ、
どこかで不満をおぼえていた部分。
(手塚ファンの方、ごめんなさい。笑)

実際、人はうまくいかないことがあると、
その原因を外に求めたくなります。
それ自体しかたないところもありますが。。。

そこにどこまで真実があるのか?

思うようにいかないのが世の中なのか?
そんなため息をつきながら生きていかないとならないのか?

まだ若かった僕は、心の中でそんなことばかり思っていました。
もしかしたら、それは「正しい」のかもしれない。
でも、それを認めてしまったら、自分が自分でなくなってしまう。。。

その後、そうした負の体験から生じる恨み・つらみの感情を、
哲学の世界では、

「ルサンチマン」

と呼んでいることを知りました。
このルサンチマンをいかに克服するか? 突き抜けるか?

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが。。。
その問いに明瞭に答えてくれたのが、哲学者の竹田青嗣先生だったわけです。

竹田先生は、ニーチェの言葉を解きながら、
ヨーロッパで生まれた近代哲学が何を問題にし、
どこで行き詰まってしまったのか? 

ニーチェは、その行き詰まりをどう克服しようとしたのか? 
わかりやすく伝えてくれました。

キーワードとなったのは「主観」と「客観」

つまり、内側で感じている世界と外側にある世界。。。
この二つをどう一致させたらいいか?

目の前にあるリンゴと、それをリンゴだと感じている自分。

ふだん当たり前のようにつなげてとらえていますが、
本当につなげられるものなのか?

もしそれが不確かなものであったとしたら。。。。

自分が何をどう感じていようが、
どれほどすばらしい価値観を持っていようが、

たとえば、外側の世界で「戦争」が起こったら、
ただわけもなく巻き込まれ、翻弄されるしかありません。

不慮の事態に見舞われた人は、すべて被害者。。。
それでいいのか? 本当にそれが人生なのか? という話ですよね。

デカルト、カント、ヘーゲル、そしてニーチェ。。。

近代哲学を築き上げた巨人たちは、
それぞれのやり方で、この主観と客観の問題に取り組んだ。。。
と、竹田先生は語ります。

とはいえ、そう簡単に解が得られたわけではなく、
むしろ、時代が進むほどに袋小路に入り込んでいき。。。

その袋小路から思いがけないやり方で抜け出し、
「主観」と「客観」の問題を解き明かしたのが、ニーチェだったわけです。

ニーチェのまなざし、その先にあるフッサールのまなざし。。。

次回のメルマガでは、竹田先生の哲学論をベースに、
「自分の世界は自分が決めている」 というテーマでお届けしていきます。楽しみにお待ちください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
一緒にセルフメンテナンスをして豊かな人生を創りましょう。

セルフメンテナンス協会・メールマガジン2020/10/12配信)より転載

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