「細胞のふるまいにゆだねるだけで、身体は自然に動き出します」(田畑浩良インタビュー①)

「自然体で生きる」と言いますが、実際にどう生きたらいいのか? そんな問いかけの先に、ロジカルな言葉を超えた微細な感覚が広がっていることは、想像できるでしょう。

感性の優れた人は確かにいますが、それは数値では表せません。でも、すごいものをすごい、美しいものを美しいと感じることは、決して曖昧なものではなく、むしろ確かなもの……。この言葉にはできない、でも確かなものを、どう実感し、日常のなかで育んでいけばいいのか? そうしたアプローチを行っていく助けになるのが、身体の筋膜に働きかける、ロルフィングというボディワークです。

「筋膜」という言葉とともに、この数年、その名前を耳にする人も増えてきたと思いますが、今回のインタビューに登場するロルファー・田畑浩良さんのテクニックは、かなりユニーク。なぜなら、施術をする側とされる側の“関係”を整え、その場所の違和感を取り除いていくだけで、直接触って、強い圧力を与えなくても身体は十分に反応し、不調和が改善されていく……そんなちょっと不思議なワーク(アート・オブ・イールド)を実践されているからです。

イールド(yield)とは、ゆだねて、落ち着くという意味。その空間に身をゆだね、細胞の微細な動きをうながしていく……そこには自分が生き物であること、そして自然とつながっていることを思い出させてくれる、心地よく、豊かな世界が広がっています。こうした田畑さんの稀有な身体知を、ゆっくりと言葉をつむぎだしながら、これから迫っていきたいと思います。

2016年8月、都内にて収録。今回はその前編。

圧力をかけず、微細に整える

――田畑さんの施術は、ロルフィングをベースにしながらも、オリジナル性が高いというか、独自のスキルを確立されていると伺っています。

田畑 ロルフィングは、筋膜のネットワークを整えていくことを基本にしていますが、私の場合、その際に直接的な圧力をかけず、なるべく微細に整えられれば、そのほうがいいのではないかと、探求してきた経緯があるんです。

――筋膜に着目しつつ、一般的なロルフィングよりさらに微細なものを求められてきた?

田畑 そうですね。

――もともとそうした考え方、フィーリングがあって、その手段としてロルフィングを学ばれたという感じなのでしょうか?

田畑 そうですね。ロルフィングには、認定を受けるまでに基礎トレーニングが3段階あって、最初のトレーニングは、私が受けた当時、「ファンデーション・オブ・ボディワーク」という名前がついていました。その名の通り、ボディワークの基礎を学ぶとりかかりのトレーニングとして、しっかりしていそうだなと感じて入ったのですが、最初からロルフィングに絞っていたわけではありません。

――ボディワークの入り口として。

田畑 入り口として。はい。

――そうやって段階を進んでいきながら、やがて施術を始められたのだと思いますが、その過程で、もともとのフィーリングの部分を反映させ、加味させていった感じでしょうか?

田畑 施術の基本的な部分については、「構造的な配列が整えば重力がセラピストになる」という、ロルフィングのロゴマーク(下記参照)に象徴される考え方があり、そうなることを一応のゴールとして持っていていいだろうというところは同意しています。ただ、そこに至る過程ですよね。

リトル・ボーイ・ロゴ

――ゴールに向かっていく過程で、もっと微細にやれるのではないかという……。

田畑 ええ。トレーニング中、クラニオセイクラル(頭蓋仙骨療法)を探求している方のセッションを受けたことがあるのですが、こういう手法で構造的な統合ができるのであれば、そのほうがいいんじゃないかと感じたことも大きかったと思います。

――微細な感じがあったわけですか?

田畑 ええ。ロルファーのなかにも、微細なタッチを探求している人たちがいますから、影響を受けた部分もあったかもしれません。

――ただ田畑さんの場合、本当に触らないくらいの、むしろ(クライアントから)離れている時間のほうが長いって、噂を聞いていたんですが。

田畑 ははは。噂を(笑)。

――一般人が思い描いているような施術とは、かなり違う印象ですよね? そもそも、そんなもので本当に効くのかって普通の人は……。

田畑 思うかもしれません。ただ、ロルフィングの場合、セッションの前後に写真を撮って身体の変化を追跡し、セッションの内容が反映されているかどうかを確認しています。あとは受け手の方のフィードバックをいただきつつ、だんだん(現れた事実を施術に)置き換えていく感じですね。

――たとえ不思議に思える手法であっても、実際に変化が出ている以上、そこに因果関係があるはずだから、それを拠りどころにして……。

田畑 そうですね。

――そうしたセッションを繰り返しながら、だんだん独自の手法を確立されていった?

田畑 ええ。ロルフィングには、通常のロルフィングのほかに「ロルフ・ムーブメント」(1)という技法があって、アメリカのボールダーで第一段階のトレーニングを受けている合間にその個人セッションを受けたのですが、これが非常に面白く、身体の微細な変化が実感できたんですね。(そのとき初めて)これならやれそうだ、自分が思っている方向性と合っているという感じがあって。

――ロルフ・ムーブメントを通じて、手応え、実感が得られた感じですか?

田畑 はい。ロルフィングはロルフィングで面白かったのですが、自分にマッチしたのはロルフ・ムーブメントのほうでしたね。これを8セッション受けたあと、このプラクティショナー(実践者)になりたいなって思えたのです。

「落ち着きどころ」を探す

――このロルフ・ムーブメントをベースにしつつ、発展させていった部分が合ったと思うのですが。

田畑 そうですね。ロルファーとして認定された翌年にロルフ・ムーブメントの認定のコースに入ったのですが、そのときにイールド(yield)という概念を紹介してもらって……。

――ああ、そこで「イールド・ワーク」につながるわけですね。

田畑 イールド(yield)というのは、あずけるとか、ゆだねるとか、そうした動きにつながる概念なのですが、それと「細胞のふるまい」と言いますか、自分がそれまで探求してきたことがつながってきたというか、ここをもうちょっと膨らませていこうという気になったんですね。

――細胞のふるまいというのは、比喩的な印象もありますが、実際、どんなふうにイメージすればいいのでしょうか?

田畑 セッションで言えば、まず(受け手の人の身体を)足場にちゃんと接地する、それで、足場ができたらそこから拡がろうとする動きが出てきますから、その二つの動きをうまく引き出してあげれば、モティリティ(motility)と呼ばれる細胞の微細な動きが引き出せると考えています(注2)。

――足場というのは? いわゆる立った状態の足場とは違うんですか?

田畑 立っているときは足もとが足場になりますが、寝ているときは主に背中ですね。

――ああ、接地点になるところ。

田畑 そうです。落ち着きどころというか、ここが一番大事なんです。

――たとえば、体調が悪かったり、身体のどこかに痛みがあったりする人は、落ち着けていないというか、その接地に問題がある?

田畑 そういう場合もありますね。たとえば昔、ガラスの破片や釘を踏んでしまったことがあった場合、傷が治っても接地することに対して身体が身構えていることがあります。

――本人が忘れているような場合でも?

田畑 思考レベルではないというか、身体が接地しても安全であることに納得していないと、いつまでもグラウンディング(注3)できないんです。

――それは、頭の記憶というよりもっと深い……。

田畑 もっとベーシックな、組織レベル、細胞レベルでの話だと考えてください。

――それを癒すというか。

田畑 ロルフィングでは、リセットする、再教育するって言いますね。

――接地の問題はほかにもいろいろありそうですね?

田畑 たとえば、緊張状態が高かったり、ストレスがひどかったりすると、身体を休めること自体に問題が出てきますよね? 横たわって、休んでいるように見えても、身体はホールドしていて、重さの分だけ接地できていないという……。

――あると思います。現代人は、むしろそのほうが多いのかもしれません。

田畑 十分に接地できていれば、ヨーガの死体のポーズにつながる状態と言えますし、そうした深いレベルの接地ができれば、ひどい疲れがあったとしても翌日にはしっかりリセットできているでしょう。要は、そうした休息できる状態を引き出してあげるのがすごく重要だということです。それは、「寝た状態で重力に調和する」ということだと思いますが、ここが一つのカギになると思っています。

動きのない状態をどうするか?

――重力に調和するんですね。ロルフィングの基本概念である筋膜の調整は、こうしたプロセスにどう関わってくるのでしょうか?

田畑 ロルフィングでは、コラーゲンを主成分とする筋膜のネットワークに着目しますが、その全体の張力を監視しつつ、実際にコラーゲンを産生・代謝しているのは、細胞外マトリックス(注4)に埋め込まれている線維芽細胞などの生きた細胞たちです。これが、細胞の内側の張力と協調しながらテンションを生み出していることになります。

――筋膜というより、筋膜を構成している細胞の働きが重要なイメージですね。

田畑 ええ。センサーとしての細胞があらゆる方向に広がることのできる状態であれば、動的な平衡が保たれ、その外側にある筋膜はつりあいを保ってくれると考えるんです。変化が現れるのに、ちょっと時間がかかりますけれどね。

――よく筋膜がしわになって、ゆがんでいるから、身体の調子が悪くなる。それをリリースすればいいといった解説がありますよね?

田畑 ありますね。

――ロルフィングの手法で筋膜がリリースされるというのはイメージできるのですが、田畑さんのようなあまり触れないやり方で筋膜がゆるむというのをどう理解したらいいのか……。

田畑 まあ、起きていることが本当かどうかわからないですけれど、物質としてのコラーゲンファイバイーに直接働きかけているというより、そのなかに埋め込まれている細胞……。

――ああ、細胞のふるまい。

田畑 そうですね。筋膜という細胞の外側の釣り合いより、そのもとを作っている細胞自体に焦点を向ける感じでしょうか。

――ただ、同じ身体を扱っている専門家でも、整形外科の先生から見た場合と視点がまったく違っていますよね? 医学的な知識との整合性をどうすればいいのかという話を聞くこともあるのですが、そのあたりはどうとらえておられますか?

田畑 そうですねえ……。そこはわりと諦めている面もありましてね(笑)。

――まあ、難しいですよね。

田畑 ただ、身体に何らかのひずみが生じた時に組織が萎縮して、動きがなくなるということは、たぶん(医学的にも)言えると思うんですね。この動きがない状態というのが、身体にとっては一番まずいわけです。動きがないというのは、身体のほかの場所と連携が取れていないということになりますから、そこのリズムをいかに取り戻すか……。

――リズムですね。

田畑 長沼さんも生体リズムの取材をされていると伺っていますが、べつに完全に同期したリズムじゃなくても、ランダムでもいいから、(動いていない場所に)振動が伝わることが大事なんです。それをするのに、「ゆだねて落ち着く」というイールドの概念がすごく役立ってくるんです。

足場ができると拡がっていく

――興味深いですね。振動とイールドのつながりについて、もう少しお話しください。

田畑 まず動きが出るためには、細胞が浮遊している状態よりも、ちゃんと足場があって、そこに接地していることが大事なります。足場ができると、細胞骨格にダイナミクスが生まれ、そこから外側に拡がろうとするときに、内側にも、セル・モティリティ(細胞の運動性)と言っていいかもしれませんが、そうしたテンションが生まれるんだと思います。

――振動を伝えることで、足場に落ち着くことできるという感じでしょうか?

田畑 身体のどこかにフリーズするところがあったり、接地するのに警戒して、リセットできないことがあったりしても、「ここに落ち着いていいんだ」と認識して、実際にあずける動きが出てくれば、それだけで細胞にも動きが現れ、リセットするきっかけになるわけです。(イールドの)セッションは、そのリセットの手助けになると思います。

――たとえば、葉山の海岸を歩いていると、潮の満ち引きに身体のリズムが同調するような、何とも言えない心地よさを感じることがあるんです。これは心理的なものだけではなく、実際に波の振動が身体に影響を与えている結果だと思うんですね。つまり、物質的なものだけではなく、もっと目に見えない微細なものも人に影響を与えている……。

田畑 ええ。

――そう仮定した場合、施術者である田畑さんと施術を受ける人との関係のなかで、直接さわらなくても、つまり、心地よい関係性をつくるだけでも癒されることってある気がするんですけれど。

田畑 おっしゃる通り、たとえばここを訪れて、「いまは警戒しなくていい」って思えれば、それだけでプロセスが進んでいきますね。

――それだけでというところが鍵ですね。思うと言っても、身体が理解するということですよね?

田畑 ええ。ですから、プラクティショナーとしては、身構えなくていい、安全な場所を提供してあげることが何より大事なんです。よく言われるプラクティショナーのプレゼンス(施術者としての存在感、あり方)を保つとか、場を提供するといったことも、同じ意味だと思いますけれど。

――たとえば、お医者さんでも安心感が与えられないと患者さんは嫌がりますし、治療にも影響が出てきますよね? 田畑さんが探求されているのは、そのもっと繊細な部分だと思いますが……。

田畑 新しい方が来たら、(医者であっても)まずその場所で落ち着いてもらうための工夫をしますよね。私の場合、それはどういうことかというと、ここに立つと安心できるけど、こちらはいやだとか、まずそういう部分なんです。

――ああ、そこから始まるんですね。

田畑 その安心できる・できないという感覚には、もしかしたら過去の怪我や事故が関係しているかもしれないし、まったく関係していないかもしれない。日によっても変わるかもしれないし、ほかにも何か要因があるかもしれない。そうした理由はともかく、とりあえずお互いにとって抵抗のない位置を探して、そこに立って、その人の反応をしばらく待ってあげるということをしているんです。

ふれる前に「居心地のいい状態」をつくる

――もしかしたら、ただそれだけでも振動が伝わり、変容が始まるということですか?

田畑 クライアントのスキルの高い方の場合は、それだけで身体が開いていき、いろいろなプロセスが進んでいくのがわかりますね。まあ、そうしたフィードバックがなかなかもらえない時には、こちらで働きかけていくしかないんですけど、お互いに安全だと感じられる居心地のいい状態を、身体に触れる前に確立することが大事ですね。

――それがスムーズにできる相手ほど、身体のほうもスムーズに変化しやすいということですね。ここ、かなり重要な気がします。

田畑 そうです。ここを飛ばして、いきなり触れてしまうと、いろいろな問題が生じるんです。

――日常のなかで、人と向き合ったり、仕事でパソコンに向き合ったり、食事で食べ物と向き合ったり……この世界はすべて自己と他者のコミュニケーションで成り立っていると思うんですね。で、この関係性のなかで生じたズレがうまく調整できないと、身体が不調になるのではないかという……。

田畑 そうかもしれません。

――ですから、何を食べたら病気になるとか、夜更かししたから健康に悪いとか、一概には言えないというか……。自分のなかでうまく関係性が築けていれば、多少無理をすることがあっても、快適でいられるのかなと感じるんです。

田畑 リズムとの関連で言えば、たぶん、その人にとっての本流みたいなものに乗っていればいいと思うんですね。夜更かしするときも、本当に探求したいものをネットで調べているのであればいいですが、タスクみたいなものを嫌々こなすために見ていたら、身体に悪いでしょう。同じネットを見るという行為でも、質が違ってきますよね。

――嫌々のレベルが増えるほどリリースしなければいけない不調が出てきて……。

田畑 そういうことだと思いますね。

――そうした不調を何とかしたくてロルフィングを受ける人もいると思いますが、ただ受ければいいわけではないですよね?

田畑 自分では何も変えず、ストレスのかかっている日常の状態は維持したまま、ただ身体の不調だけ直したいというのは無理な話ですね。

――不快な症状を取り除いてほしいと病院に駆け込んでも、思惑通りに治るとは限りません。それと同じなんでしょうね。

田畑 ええ。ロルフィングをきっかけに、身体が統合されていくにしたがって仕事を変えたり、ライフタイルを見直したり……。

――そうやって、意識が変わって。

田畑 ロルフィングのセッションを続けていくことで、そうした動きが出てくると、身体のほうも変わっていきやすいですね。そうした意識の人であれば、本当に自分が進みたい方向性に乗っていくまでの手助けになると思います。

――そうでない人は?

田畑 (体調が悪くなっても)そのままで何も感じないで突っ走るような人は、かえって受けないほうがいいかもしれません。全部をちょっとずつ変えていく必要があるんですよ。そうした意識がないと、無駄な投資になるんじゃないかな(笑)。

後編に続く)

注1:ロルフ・ムーブメント…「ロルフィングを通じて解放された身体を日常でどう動かしていくか」に主眼を置いたセッション。
注2:モティリティ (motility)…ボディワークでは、視覚的にハッキリわかる、関節を通した比較的大きな動きを指すモビリティ(mobility)に対し、タッチを通して感知できる組織、器官、細胞の微細な動きをこう呼んでいる。
注3:グラウンディング…重心が安定して地に足がつき、現実世界でシッカリ生きている状態。
注4:細胞外マトリックス…細胞と細胞の間を埋め、足場を作っている空間。筋膜を構成するコラーゲン繊維もここに存在している。

田畑浩良 Hiroyoshi Tahata
1963年、栃木県・那須塩原市生まれ。島根大学生物化学研究室 (現・生命工第5研究室)を卒業後、林原生物化学研究所(現・林原)に勤務。新規生理活性物質の探索、Bi-Digital O-Ring Testの下津浦康裕医師との共同研究に関わる。1998年、米国ロルフ・インスティテュート(Rolf Institute)によってロルファーとして認定。以後、ロルフィングの個人セッションやワークショップを提供。数々の認定トレーニングの助手を経て、2009年、ロルフ・インスティテュートのムーブメント部門の教員となる。現在も個人セッションを軸に、ロルファーの継続教育や一般向けワークショプを提供中。繊細なタッチのみで行うイールド・ワーク(The Art of Yield)は、国内外で高い評価を受けている。https://www.rolfinger.com/


「ロルフィング」とは?
ロルフィングは、筋肉や内臓などを包み込んでいる「筋膜」という結合組織に働きかけ、身体のゆがみ、コリ、緊張を改善していくことで、ヒトに本来備わっている心地よい動作や姿勢を取り戻していくボディワーク。

創始者であるアイダ・ロルフ博士(1896〜1979年)は、アメリカで活動する生化学者でしたが、自身や家族の身体の不調を改善するためさまざまな治療法を学び、やがて筋膜の重要性に着目。自らが「ストラクチュラル・インテグレ-ション」(身体的構造の統合)と名づける独自のワークを確立させ、のちにこれがロルフィングと呼ばれるようになりました。

ロルフィングが重視しているのは、身体と重力との関わり。身体が日常のなかでバランスを崩すと、重力が負荷となってのしかかるようになり、その結果、筋膜がゆがみ、身体の緊張やコリになって現れます。

ロルフィングでは、こうした筋膜のゆがみを整え、重力と調和した心地よい身体を取り戻すため、認定を受けたロルファーが基本的に10回のセッションを行っています。

★詳細は、日本ロルフィング協会まで。

ロルフィングの創始者アイダ・ロルフ博士。
写真提供:Rolf Institute® of Structural Integration. Photo credit: David Kirk-Campbell, Certified Advanced Rolfer™

「アート・オブ・イールド」とは?
「アート・オブ・イールドと呼ばれる技法には、①施術者側の知覚・意識の向け方を重視する、②培養細胞の原初的な振る舞いにならう、という2つの柱があります(ムーブメント教員のメアリー・ボンドは、「いまの瞬間に完全に心を置き、繰り返し“全体”をよく観るための探求」と表現しています)。

ヒトは、母胎で育っている段階から、自分の重さを母胎にゆだねるイールドという動きを土台にして成長しています。日常の動作においても、たとえば何かを取ろうと手を伸ばす時、その土台となる足が床に対して(あるいは座面がイスに対して)しっかり接地し、落ち着いている (=イールド)必要があります。

こうしたイールドは、身体のさまざまな動きに影響し、その質を決定させています。しっかりゆだねられるからこそ心地よい動作ができ、疲れのたまらない健康な身体を維持できるのです。

それは、身体を構成している細胞のふるまいにも観察されています。正常細胞の多くは、生存と増殖のため、まず落ち着くための足場を要求する性質(=足場依存性)を持っているからです。

これまでさまざまな技法を体験していくなかで、こうした細胞の性質に目を向けないまま、いくら痛む箇所に圧力を加えても良好な結果は得られない、むしろ悪い作用をもたらすことがわかってきました。実際、わずかな介入でも身体は変化し、バランスを整える方向に動きはじめます。それは細胞レベルの微細な動きとリンクした、生物の性質そのものを利用したものだと感じています」(田畑さん談)

お互いに心地いい間合いから見守られることで、受け手の呼吸は深くなる。
アート・オブ・イールドワークでは、触れずに見守る時間が多いにもかかわらず、施術後にはこうした変化が確認できる。

*ロルフィング®、ロルファー™、ロルフ・ムーブメント™,及び,the Little Boy Logo は,The Rolf Institute of Structural Integrationの商標であり,米国その他 の国々で登録されています。