「自分の直観を信じ、怖がらず、自然のなかに飛び込むんです」(レイア高橋インタビュー①)

ハワイに魅せられて何度か足を運ぶなかで、ふんわりと感じてきたのが、日本人である自分のフィーリングとの不思議なほどの親和性。ハワイに居心地良さを感じ、リピーターになる人は多いけれども、果たしてそれは気候のせい? 手頃なリゾート地だから? 「野性」をキーワードにひもといていくと、そこには日本とハワイの、もう少し深いつながりが見えてきます。

レイア高橋さん。欧米人のような端正な顔立ちをしている女性だけれども、日本で生まれ日本で育ち、16歳のときに海外へ渡り……。その後ハワイを永住の地にさだめ、大自然のなかにすべての答えがあることを確信し、伝統的なヒーリング技法である「ロミロミ」を会得、やがてその継承者(カフ)に。

そんな骨太な生き方をしてきたレイアさんに聞きたかったのは、今回の「野性」というテーマに相通ずる、自然とのつながり方について。人は自然とのつながりを失った時、さみしさをおぼえ、自信を失い、やがて他者を疑うようになる。――「野性」について探求するなかで浮かび上がってきた、こんなふんわりとした公式に、レイアさんの感性を代入して解を導き出したらどうなるだろう?

ネガティブな連鎖から抜け出し、生きることの自信、心の安らぎ(=マインドフルネス)を取り戻していくうえで必要なもの。生きていくうえで核になるもの、土台となるもの、どっしりした不動のもの。どんな境遇、どんな立場であっても、「これだけは大丈夫」と心のなかで言えるもの。古代ハワイアンの歴史・文化についてのお話を織り交ぜながら、レイアさんと一緒に、じっくりほどいていきたいと思います。今回はその前編。

何にどう周波数を合わせるか

――今日のインタビューの数日前、大阪で生命学者の中村桂子先生に、科学者として自然とどう向き合うかということについて伺ってきたんです。立場はまったく違いますが、レイアさんの話されていることとよく似ている感じがして……。

レイア そうなんですか? 私も自然と向き合っていますが、私は科学者じゃないからフィーリングで解いて(笑)。学者の方はそれを科学的に解いてくださるわけですね、方法は違うけれども根底にあるものは一緒なのかもしれません。

――逆に言うと、自然を研究の対象にしていても、ちゃんとつながれていない感じの人もいますよね? いったい何が違うんでしょうか?

レイア たとえば、自己啓発の本を読んでもすべての人が成功できるわけではなく、ここにもやっぱりうまくいく人といかない人がいますね。どの分野でも同じだと思いますが、何が違うかというと、周波数の違いということなんでしょう。

――周波数?

レイア ラジオでもテレビでも、情報をキャッチするには、周波数を合わせないとならないですよね。昔はAという番組が聴きたいと思ったら、ラジオのアンテナをあちこち動かして、この場所がよく入るというところを探したじゃない? もちろん、電波がよく入るところでも、キャッチできるのは一つのチャンネルだけで、少しずれると違うものが入ってくる。それは周波数が違うからですよね。

――なるほど。問われるのは、何にどう周波数を合わせるかということですね。

レイア 自分にもアンテナが伸びていると考えたら、そのアンテナがとらえた周波数とつながっていることになりますね。それで何かが聞こえたり見えたり、情報が手に入るわけです。

――自分の周波数に合った情報が入ってくると?

レイア ええ。高い周波数を持っている人は高いところにつながるし、低い周波数を持っている人は低いところにつながる。それを引き寄せの法則と呼ぶ人もいますが、要は何につながるかなんですよ。

――周波数が高い、低いというのは……。

レイア 夢とか理想とか、自分自身が求めている素晴らしいものを周波数が高いものとイメージすればいいんじゃないかしら。そうしたものを引き寄せたかったら、自分の周波数を上げなければならないですよね? ラジオの受信機を持っているのに、アンテナが情報を受信できていなければ、願いが叶わなかったとしても仕方がないことです。

――思いを叶えたかったら、その周波数に自分を合わせないとならないわけですね。

レイア 引き寄せの法則の本を読むのもいいですが、それだけではなく、やっぱり行動も必要ですよ。だって、電波がキャッチできるような環境に行って、アンテナを合わせなければ、つながるものもつながらないでしょう? でも、そういう人に限って、地下室にこもっていて全然つながらないと言っている(笑)。地下は電波が来ていないんだから、キャッチできないのは当たり前なのに、そこから出ようとしないし、自分が電波の届かないところで文句を言っていることすら気づかない。ラジオを買っただけでは、受信はできないですよね。

感じることに答えがある

――自然と接する場合も同じでしょうか?

レイア ええ。大自然の生命周波数は高いですから、頭で考える理屈を捨てて、自分の感覚を自然とつなげるんです。大事なのは、やっぱり周波数ですよ。自然の周波数に自分を合わせてないのに、何も感じられないと言われても、それはラジオのスイッチをオフにしたままなにも聞こえないと言っているのと同じです。

――たとえば、学者は自然を対象にして、いろいろな生き物を観察したり、現象を分析したりしますが、周波数がちゃんと合っていなければ……。

レイア 分析だけでは本質は見えないかもしれませんね。

――自分はわかっていると思っていても、それは全体のある一部分を切り取っただけだったり。

レイア 要は、一人ひとり、能力の使い方が違うわけですよ。目で見て感じやすい人、耳で聞いたほうがいい人、匂いをかぐことに長けている人、いろいろいるでしょう? 勉強する場合も、ノートをとったほうが覚えられる人、暗記が得意な人、数式を書くのが好きな人、いろいろですよね?

――であれば、自然のとらえ方も?

レイア たとえば、ビジュアルを感じるタイプだったら、実際に葉の動き一つ一つを観察したらいいでしょう。聞くのが得意な人は、風の音、木の擦れる音を聞いて、触れることで感じられるという人は、実際に木に抱きついたり、花の匂いを嗅いでみたりすることで、自然というものを自分なりにとらえていく必要がありますよね? 自然とうまくつながれていない人は、要するに、こうした感覚をうまく使いこなせていないんですよ。自然とつながるきっかけを、自ら絶ってしまっていると思うんです。

――野性を見失っているということですね。

レイア そうですね、まさしく野性の開花が必要と言えるでしょうね。このにおいは好きとか嫌いとか、これを食べると美味しいとかまずいとか、すべてが野性のなかに含まれているわけだから、何が大事なのか、何が真実なのかを知りたかったら、ただその感覚を素直に表に出せばいいことになります。

――そんな感覚は不確かで、あてにならないと思われている部分もあると思いますが……。

レイア その人がどうしたら納得できるかが大事ですから、一つの方法として科学的に裏付けがあるかを調べて、データを割り出して、それで正しさが証明できれば、納得するということもありますよね。それも素晴らしいことだと思いますが、そんなふうに細かいことがわからなくても、自分の感覚さえ信じることができれば、そこに答えがすべてある。自然のなかにすべての答えがあると言いますが、私たちだって自然の一部なのだから同じことです。

理屈を超えた感覚を味わってみる

――いずれにしても、自然とつながらないとならないわけですね。もともとそういう感覚を持っている人もいると思いますが、人生のあるタイミングでつながるコツをつかむ人もいますよね?

レイア タイミングはあると思いますよ。

――たとえば、そうした感覚を持った人と出会って、その人を師事したり、真似したり……。

レイア いまの世の中だと、いろいろと情報が多すぎて、いったい何が自分に合っているか、選ぶ前にいっぱいいっぱいになっちゃうでしょう? だから、もし素晴らしい師にめぐり合えたならラッキーなことですから、自分の直観を信じて飛び込むべきです。

――そういう師にめぐり合えなかったら?

レイア 次に可能性があるのは、いろいろなものとのつながり、ご縁ですね。たとえば、いい本にめぐり合うことだってご縁ですから、まわりに自分を理解してくれる人がいなくても諦めないことです。とりあえずどうしたらよいのかわからなかったら、もっと大きなつながり……とにかく大自然のなかに出て、思いっきり心を開いてみることです。

――誰にでもできることでしょうか?

レイア 難しいことは考えず、何の理屈もなしに、とにかく触れてみることです。広い海を見て、砂浜を裸足で歩いて、高い山を仰ぎ見て……すごいなっていう畏敬の念、理屈を超えた感覚を味わってみるんです。その場で自分自身が触れたときしか出てこない感覚ってあるでしょう?

――理屈を超えることがポイントですね。

レイア そう、それは頭で考えたものではない、まさに身体で、細胞レベルで自然とつながった一瞬だと思います。そういう自然とつながる瞬間を増やしていけば、だんだんとつながる感覚がつかめ、周波数が整って、いつの間にかそのなかにある素晴らしいものを日常のなかに引き出していけるようになります。

――素晴らしいもの?

レイア たとえば、お医者さんが病気を治そうと思った時、その治す力そのものは治療のなかにではなく、自然のなかにあるということです。自然治癒力と言ってしまうと、その通りなのですが、自分の力だけで治しているわけではない、自然の生命力が自分の細胞の一つ一つに力を与えて治しているんだと思えたら、自分がいまやっていることの意味は大きく変わります。それまで身につけてきた技術も、もっと役立てられるようになるでしょう。

――それは医療に限った話ではなく、他の仕事にもつながってくることですね。

レイア 自分の持っている能力を引き出す秘訣のようなものだと思えばいいかもしれません。それは誰でもできることだから、特別に思わないこと。たとえば、会社に行く途中、15分だけ遠回りして神社や公園を散歩し、まず自然に触れることです。身近な自然を意識するだけでも変化は生まれます。そうやって少しずつ、野性のカンを取り戻すんですよ。

一歩踏み出す勇気を体験する

――たかだか15分遠回りするだけでも面倒だという人が、なかにはいますね。

レイア いるかもしれないわね(笑)。

――それって、もう少し掘り下げて言うならば、一歩前へ踏み出し、現状を変えるということに心理的な怖さがあるのかもしれません。現状維持に留まろうとするのもそれゆえだと思いますが、レイアさんのセミナーに参加する人って、その一歩前に踏み出すという体験を思いっきりされるじゃないですか。

レイア 確かにそうね。皆さん、どんな状況も障害も乗り越えてハワイまでやって来られますから。

――時間をかけて、お金をかけて……レイアさんと寝食を共にしながらロミロミを学んでいくわけですよね? ただ、ロミロミと言っても、マッサージの方法だけを伝えているわけではなく……。

レイア ロミロミとは、古代ハワイアンにとっては健康でしあわせに生きるための総合ヒーリングそのもの。心身を癒し、浄化させる生き方の知恵です。マッサージの部分はそのほんの一部でしかありません。

――ハワイで合宿を続けてこられたのは、やはり自然とのつながりを感じてもらうため?

レイア はい、自然とのつながりのなかに癒しの原点がありますから。

――でも、それだけではないでしょう?

レイア そうですね。本当はね、自然とのつながりを学ぶためにはわざわざ遠い外国まで行かず、近くの温泉でもいいんです。大事なのは、どこに行くかよりも「誰と時間を共有するか?」「どういう理由でそこに行くか?」ということだから。ただ、思い切って自分の日常の生活から飛び出してみることで、今まで気づかなかった新たな自分を発見することができるのは確かです。

――今年で言えばイングランドとか、ギリシャとか、世界のいろいろなところをツアーでまわっているのも、同じ理由からですか?

レイア 野性のカンを取り戻して、本来の自分に備わった感覚で大自然のすばらしさを感じて、それで癒されて……そうしたたくさんのベネフィット(恩恵)を手に入れる一番のきっかけは、まず勇気を持って一歩進むところにあるんです。ただ、そのとき何が障害になるかって言ったら、初めてのところに一人で行くのは不安ですよね?

――普通、尻込みしますね。

レイア そうですね。だから、誰か信頼できる人がいて、その人についていれば大丈夫という安心感があれば、たいがいのことは怖くないんですよ。だから、私自身は「大丈夫、あなたと一緒に行くよ」「いつもそばにいるよ」という気持ちで寄り添い、皆さんに一歩踏み出す勇気を体験してもらっているんです。最初の一歩が踏み出せれば、次の百歩を踏み出すことが出来るようになりますからね。

――最初の一歩が、すべての始まりなんですね。

レイア そう。「そのうち機会があったら」とか言っていたら、その一歩が出ないんです。変わる可能性があっても、それでは変われないでしょう? その一歩を踏みださせてあげるために、私がいるんだろうなって思います。そこから後はどこまででも飛び上がっていけるし、どこまででも進んでいけるけれど、その最初のきっかけを作ってあげるためには、案内する私のなかに安心感、信頼感がないとね。

――レイアさん自身が、自然を信頼しているんですね。

レイア そうなんです。ずっとそうしてきたから、私にとってはそれが普通なんです。

すべては自然が教えてくれた

――レイアさんは、十代の頃から海外に出られ、いろいろと旅をしたのちに、ハワイに定住するようになったと聞いています。そうした若い頃、一歩踏み出す怖さはなかったんですか?

レイア なぜか怖さはありませんでした。未知の世界というのは、不安よりも、ワクワク感とか期待感のほうが大きくて、どうしてもそちらが勝ってしまう。なぜかというと、ジョン万次郎じゃないけれど、昔の人のなかには船が漂流して、流れ流れて外国に行っちゃう人がいるわけじゃない。そんな人たちがいて、言葉もわからないのに遠い外国で暮らせてしまったりするわけだから、今の時代で自分ができないのはおかしいですよね? あえてやる必要はないかもしれないけど、できないと思うのはおかしいでしょう?

――確かにそうですよね。

レイア 行ったことのないところに行って、そこの街や村、自然に触れてみたいという気持ちのほうが、私は強いんです。なぜかと言ったら、この先にはもっと素晴らしいものがあるはずだっていう、ワクワクする予感があるから。そういう自然の素晴らしさを、自分自身が知っているから。

――それは誰に教えられたわけでもなく、感覚的にもともとあったもの?

レイア 自然が教えてくれたんですよ。

――物心ついた頃から? 自然と言っても、レイアさんも東京で生まれ、普通の暮らしもして……。

レイア 私の父は車が好きで、小さい時からいつも愛車で遠くの山や海に連れて行ってもらったっていうこともありましたが、最初に自然の素晴らしさを感じたのは、明治神宮の森を歩いた時だったかもしれないですね。2歳くらいの頃だと思いますが(笑)。ほかにも皇居のまわりとか、新宿御苑とか、ああいう都会のなかにあるちょっとした自然であっても、心を開いていればいろいろなことを教えてくれるんですよ。

――そういう体験自体、誰もができますし、普通といえば普通ですよね。

レイア 普通ですよ。まあ、その普通を感じられない人のほうが多いから、私はずっとみんなにもそれを感じてもらいたいって思ってきたのかもしれません。自然とつながるってことは決して大げさなことではなく、ちょっと見方を変えたり、感じ方を変えたりしたら違うものが入ってくるということを教えてあげたい感じかな。それで十分に、人生は変わっていくものなんですよ。

後編に続く)

(プロフィール)
レイア高橋 Leia Takahashi
ハワイアン・ドリーム・クリエイションズ(HDC)代表。ハワイを拠点に、「ロミロミ」の伝統的スタイル(マナヴァヒ・スタイル)のカフ(継承者)として、ハワイに古くから伝わる生き方の哲学「フナの教え」に基づいた質の高い教育プログラムを提供。古代ハワイアンの歴史や文化をはじめ、浄化のための瞑想法、呼吸法、チャント詠唱法などを伝えるほか、スピリチュアル・コーディネーターとしてハワイの7つの島や世界各地で聖地ツアーやワークショップを主催。地元ハワイの教育テレビ番組で古代ハワイ文化のスピリチュアリティを伝える講師として活躍している。著書に『癒しのパワースポット』シリーズ、『フラ・カヒコ 魂の旅路』、『宇宙に愛される幸運エナジーの法則』などがある。
https://www.aloha-hdc.com

【ハワイ史年表】
●有史以前

3〜5世紀 ポリネシア人渡来。
10〜13世紀 ポリネシア人大量渡来。

●ハワイ王国の成立
1778年  イギリスよりクック来航。
1810年  カメハメハ1世、ハワイ諸島を統一。
1820年  宣教師団上陸。
1840年  ハワイ国憲法成立。立憲民主制に。
1872年  カメハメハ王家の血筋断絶。
1885年  日布渡航条約が締結。日本からの移民が増加。

●共和国からアメリカ領へ
1894年  ハワイ共和国成立。
1898年  アメリカ合衆国、ハワイ併合。
1941年  日本、真珠湾攻撃。太平洋戦争勃発。
1945年  太平洋戦争終結。
1959年  ハワイ州が成立。ハワイアンブームが起こる。