「自然の扉は目の前にあるんですよ。『大丈夫、開けてごらん』と伝えるのが私の役割なのかな」(レイア高橋インタビュー②)
ハワイに魅せられて何度か足を運ぶなかで、ふんわりと感じてきたのが、日本人である自分のフィーリングとの不思議なほどの親和性。ハワイに居心地良さを感じ、リピーターになる人は多いけれども、果たしてそれは気候のせい? 手頃なリゾート地だから? 「野性」をキーワードにひもといていくと、そこには日本とハワイの、もう少し深いつながりが見えてきます。
レイア高橋さん。欧米人のような端正な顔立ちをしている女性だけれども、日本で生まれ日本で育ち、16歳のときに海外へ渡り……。その後ハワイを永住の地にさだめ、大自然のなかにすべての答えがあることを確信し、伝統的なヒーリング技法である「ロミロミ」を会得、やがてその継承者(カフ)に。
そんな骨太な生き方をしてきたレイアさんに聞きたかったのは、今回の「野性」というテーマに相通ずる、自然とのつながり方について。人は自然とのつながりを失った時、さみしさをおぼえ、自信を失い、やがて他者を疑うようになる。――「野性」について探求するなかで浮かび上がってきた、こんなふんわりとした公式に、レイアさんの感性を代入して解を導き出したらどうなるだろう?
ネガティブな連鎖から抜け出し、生きることの自信、心の安らぎ(=マインドフルネス)を取り戻していくうえで必要なもの。生きていくうえで核になるもの、土台となるもの、どっしりした不動のもの。どんな境遇、どんな立場であっても、「これだけは大丈夫」と心のなかで言えるもの。古代ハワイアンの歴史・文化についてのお話を織り交ぜながら、レイアさんと一緒に、じっくりほどいていきたいと思います。今回はその後編(前編はこちら)。
食べ物からエナジーをいただいている
――レイアさんは、エナジーという言葉を使われますが、どんなふうに説明すればいいでしょう? 概念的には何となくわかるんですが……。
レイア たとえば、あの人と気が合うとか、どうも苦手だとか、この人と一緒にいると落ち着くとか……話をする前から感じられることがあるでしょう? 先ほどもお話ししたように、私たちは持っている周波数の違いによって、その人がいいか悪いか関わりなく、なんとなく印象を抱くわけです。大事なのは、そうした感覚は人に対してだけでなく、森だろうが、山だろうが、海だろうが、すべてにあるわけですね。
――あらゆるものが、それぞれ固有のエナジーを持っているという言い方ができるわけですね。
レイア それぞれの土地が持っている特有のエナジーがあって、そのエナジーのなかですごくパワフルになれたり、心が安らいで、平和な気持ちになれたり……さまざまな変化を体験するわけです。いつも仕事に忙しく、ストレスをためながら生活しているのだったら、少しだけでも時間をとって、そういうエナジーを感じてほしい、自然とのつながりを思い出してほしいと思っています。
――仕事を頑張っている人ほど、それを無視するところがありますね。その感覚がなかったら、本当はいい仕事なんてできるはずはないのに。
レイア 「これ、美味しいよね」と言った時に、栄養素がどうの、カロリーがどうのと知らなくても、お腹に優しくてとても体調が良くなったとか、体がポカポカして元気になったとか感じることがあるでしょう? その時、食べ物から何をいただいているのかと言ったら、やっぱりエナジーなんですよ。
――必要な栄養を摂取したからだという声も聞こえてきそうですが、ちょっとちがう?
レイア 栄養素はエナジーのなかの成分を分析して分類したものだから、知識としては大切だけど、それがすべてではないですよ。だって、私たちには感じる力があるわけだから、栄養の知識がなくても、素直な気持ちがあれば誰もが感じとれる、磨いていけるものであるはずしょう?
――ヒーラーと言われている人だけでなくて?
レイア ええ。職業は関係ありません。超感覚が目覚めた事務員さんでもいい(笑)。本当は感覚が一番確実なものなんですよ。
――僕は大学時代に山登りをしていたんですが、その時は自分のことで精一杯で、自然を感じる余裕が全然ありませんでした。自然のなかにいるはずなのになぜ自然が感じらないんだろうって、山のなかを歩きながら思ってばかりいたんです。
レイア その疑問はどう解決したんですか?
――ですから、周波数が合ったんだと思います、ある瞬間にふっと。
レイア すごいことじゃない。
――いやいや、一つの周波数にアンテナが合ったというだけですから、それを目覚めというのであれば、目覚めた事務員さんがいても別におかしくないと思ったんです。レイアさんにとって、生きるために大事にしていることは何ですか?
幸せになるために生まれてきた
レイア 人がこの世に生まれて存在している理由というのは、私の解釈では、幸せになるためなんですね。単純明快、それがすべて。そのために何を体験したらいいのか、それが理屈抜きにわかることができたら、すべての体験に感謝することができるようになりますね。魂の世界に帰るとき、本当に素晴らしい人生だったって思えるんじゃないかしら。
――難しく考える必要はないですね。
レイア この世の中につらいこと、苦しいことがある理由は、結局、そういう体験をしながら「本当の幸せとは何か?」を学んでいるということなんだと思います。お金をいっぱい持つことで「本当の幸せとは何か?」に気づこうとしている人もいるでしょうし、すごく貧しかったら貧しいことを通して、病気だったら病気を通して……、どういう条件であっても、みんな同じように幸せを求め修行をしているわけね。
――根っこの部分では、求めているものはみんな同じかもしれませんね。
レイア すべての体験は、次に進むための大切なステップなんです。たとえば、私が長沼さんたちに出会って、ハワイで何度もお会いしているうちに一緒に本を作ることになって、たくさんお話しする機会もでき、雑誌のほうでもインタビューしていただけることになって……ひとつひとつの出来事は偶然みたいに起ったとしても、本当は全部一つにつながっていて、お互いに協力しあったり、助け合ったりするなかで形が生まれるわけでしょう?
――何が偶然なのか不思議ですよね。
レイア そのときの自分の周波数によって人と人が引き寄せ合い、同じような周波数を持った仲間たちとつながっていくことで新しいものが生まれ、たくさんのことが成し遂げられ……そうした繰り返しのなかでさらにいろいろな人とつながり、最後の最後にはすべて一つだったとわかるんじゃないかしら。
――でも、いろいろなつながりがありますよね。
レイア どうせつながるのなら、自分自身があまり成長できないような悪いつながりのなかでもがくより、もっともっと幸せになっていくために、もっといろんなことを理解し、体験できるようになるためにつながっていったほうがいいですよね? そのために、自分の周波数を高めていくんですよ。
――それは難しいことではない?
レイア ええ。立派なことしなきゃいけないとか、人の見本にならなきゃいけないとか、無理してそういう努力をする必要はありません。ただ、肩に力を抜いて、自分が自然とつながっていることを信じてみる。それがわからないというときは、先ほどもお話ししたように、自然のなかに出ればいいんです。
――といっても、元をただせば、この世界はすべてが自然ですから、都会も自然だし、田舎も自然、分けることはできないですよね。
レイア だから、大自然と言ったほうがいいわね。そうした野生の残っている場所というのは、何も文句を言わずに私たちの生存を支え、癒してくれているエナジーで満ちています。そのエナジーは、私たちを生み出したいのちそのものと思えばいいかもしれません。最近の言葉では、マインドフルネスとかワンネスとか、横文字でカッコよく言っているけれど、どれも同じ意味だと思いますよ。
完璧なもののなかに完璧を求める
――最近、マインドフルネスという言葉をよく耳にしますが、どうとらえていますか?
レイア マインドフルネスというのは、自分の心が満たされた状態で、そのとき私たちは、すべては一つなんだということが、理屈ではなく体と心で感じられるんだと思います。それが癒しの本質でもあり、自然のなかでリラックスし、心と体が浄化されるといった変化にもつながっていきます。
――マインドフルネスを体感するにも、周波数ですね。目の前にどんな自然が広がっていても、周波数が合っていなければ、ないのと同じでしょうから。
レイア だって、見えないし、聞こえないし(笑)。
――すばらしいものをすばらしいとも感じられないわけですね。頭でとらえようとしても豊かさが実感できないから、自信も湧いてこない。だとしたら、ここが学びの第一歩じゃないかと思うんです。
レイア みんながそういう感覚を共有できる社会になったら、本当にすばらしいことよね。そのために教育がとても大事であることは確かですが、親であっても、学校の先生であっても、すべての人が体験のなかで学びながら生きている以上、そこにすべての完璧を求めるのではなく、完璧なもののなかに完璧を求めると良いのです。それがどこにあるかと言ったら自然のなかなんです。
――ああ、自然は完璧なんですね。
レイア ある意味で私たち一人一人もそれなりに完璧な存在だと言うこともできるけど、宇宙の法則に沿っているという観点から見ると自然はものすごく完璧ですよ。たとえば、ハワイって太平洋の真ん中に浮かんでいる島ですから、もともと生命体が入ってくる条件がゼロに近かったと言われています。
海に浮かんだ種が流れ着くとか、渡り鳥が運ぶとか、そうしたことが多少あったかもしれませんが、あれだけの植物が茂っているでしょう? いまは海外からたくさんの人が行き来し、いろいろなものが持ち込めるのでピンと来ないかもしれませんが、何万年も前のことを考えたら、草木が生えて、たくさんの生物が繁殖する条件なんてほとんどないわけです。
――本当に不思議ですね。
レイア 一つの島が生まれて、そこで歴史が刻まれていくなかで、まるで無から有が生じるように、自然も動いていったんですね。ハワイ原種の植物がいまもいくつか残っていますが、まわりに何の敵もいないから毒なんか出す必要なんかない。とげも生えていない。外来種が入ってきたらすべて全滅ですから、こうした植物は虫や動物がやってこない高山で生き延びたんです。何百種もあった原種は、いまは70種類くらいになってしまったらしく、あとは保護されて、野生のものはほとんどないらしいですが……。
――原種はほとんど滅んでしまったけれど、どういう経緯か、ほかの植物が繁栄し……。
レイア そう、その時代その時代に合わせて植生が移り変わっていき、弱いものは滅び、強いものは生き残り、生き残れない場合は、生き残れるように自分たちで勝手に変化し、いろいろあったとしてもそれはすべて必然で、完璧にバランスがとれているんですよ。
――生きる力のすごさというか……。
レイア だって、雨の日ばかりじゃないし、晴れの日ばかりじゃないし、ときには乾燥したり、自然災害に見舞われたり、もっと条件が悪いこともあるはずでしょう? それでも生き残っていける、形を変えながら自然そのものは続いていくんです。人間もその自然の一部で、こうして生き残ってきたわけですが、個体として見たら弱いですよね。
――生き物としては、とてもひ弱だと思います。
レイア だからこそ、自然から学ぶべきなんです、その完璧な強さと生きる力をね。そのなかには、私たちのいのちを成り立たせている同じ力が働いています。要するに、私たち自身のなかに完璧な強さ、生きる力があるはずなんですよ。抽象的な話ではありません。それに気づけていないなんてもったいないでしょう?
ハワイの風土の優しさ
――ハワイは近代を迎えるまで、長い歳月にわたってこうした豊かな自然が手つかずに近い状態で保存されてきた歴史がありますね。
レイア もちろん、ある時期から人が住むようになり、狩猟、採集、そして農耕が行われてきましたが、キャプテン・クックが来航したと言われる18世紀にいたるまで、欧米の文明の影響を受けることはなかったと思います。
――日本で言えば江戸時代の中頃ですから、僕からすると、日本の縄文時代が近代の直前まで延々と続いてきた印象なんです。
レイア まあ、確かに長いですね。
――いまの日本人には、縄文の頃のDNAがかなり残されていますから、日本人にハワイ好きが多いのも、単なる観光やリゾート目的でなく、そこにある種の懐かしさ、体に内在している自然の力を思い出す面もあるように感じるんです。
レイア ハワイの自然は、人間にチャレンジしてくような過酷なものではなく、優しさと癒しを与えてくれる穏やかさがあるでしょう? 実際にハワイに住んだことがなくても、日本人のように自然とともに暮らしてきた期間が長い人たちは、その穏やかさの部分に共感をおぼえるんでしょうね。お天道様に感謝したり、収穫を祝ったり、人間が生きていくいちばん基本の部分にクリックするんでしょう。
――穏やかさに共感するわけですね。
レイア 一口に自然と言っても、ネイティブアメリカンが体験してきた自然は、砂嵐がやって来るし、毒蛇、毒蜘蛛、さそりもいるし……。冬は雪に埋もれ、夏は炎天下で30〜40度を超えるような真夏のぎらぎらした太陽のなかで、作物は育たず満足に飲み水すらありつけない……というような土地もあったんです。
――自然との共生と言っても、住んでいる場所によってまったく違ってくるという。
レイア そうした土地では、自然をちょっとでも軽く見たらいのちがなくなってしまうわけですからね、生き残っていくためには、「どうか雨を降らせてください、獲物をとらせてください」と全身全霊で祈りを捧げ、心から尊敬の念を持って接していくための智慧が生まれたのです。
それに対して、ハワイの自然は何もなくても魚は勝手にやって来てくれますし、植物がよく育つから野菜も果物も豊富で食べるのも困らない。真冬にビーチで横になっても凍え死ぬことはないし、どんなに暑くても日陰に入れば十分に心地いいから、いのちの危険を感じるとか、尊敬しないと生きていけないなんていうことはありません。そこにはただ、ありがとうございますという、感謝しか生まれないわけです。
――感謝しかない。
レイア 美しいサンライズを見ながら、今日もありがとうっていう気持ちが自然に湧いてくるような場所ですよ。もちろん、タロイモ畑で働くのは楽ではないし、日本人だって、水田で稲作するは大変なことだったでしょう。大変という点は同じだと思いますが、でも、ただ愛情だけを込めて、ありがとうって感謝しながら作物を育てていれば、必ず収穫につながり、食料が得られるわけですから、日本もハワイも、たえずいのちの糧を与え続けてくれる感謝の対象として大自然が存在していたんだと思うんですね。
――そういう恵まれた場だったんですね。
日本とハワイをつないでいるもの
レイア 長い歴史のなかには争いもあり、ハワイ王国が生まれる過程でも、カメハメハ一世が他の島の有力者を武力で制圧していった背景があります。自然もつねに穏やかだったわけではなく、ハワイ島のキラウエアのような活火山が噴火を起こして、たくさんの家が流されたり、津波やハリケーンの被害があった時代もありますよね。
――ただ癒しの島という言葉では括り切れない、さまざまな顔がありますね。
レイア 気候の面では、ただ温暖なだけではなく、ハワイ島のマウナケア、マウナロアには雪も降りますし、カウアイ島のワイアレアレ山のように一年中雨ばかり降っている土地もあります。でも、生きていくための糧はつねに自然が与え続けてくれる。そうした土地で残っていくエナジーというのは、自然を受け入れて、自然とともにある愛と感謝のエナジーだと思いますよ。
どこに魚がいるか、ここで何か獲れるか……そういう感覚さえしっかり研ぎ澄ませていれば、何一つ失うものはない。いのちはつねにつながれていく。そんなふうに何年も何百年もつながってきたから、そこに新しく人がやって来ようが、新しい文化が伝わってこようが、おおらかに、素直に受け入れてくれる。
――日本も同じ島国として、ハワイと似ているところがあると感じました。
レイア 日本も恵まれた自然環境のなかで、独特の文化を育んできましたよね。八百万の神々という言葉があるように、その土地その土地、身近にあるあらゆるもののなかに神が宿っていると感じてきたわけでしょう? そういう風土のなかに仏教が入ってきて、キリスト教も入ってきて……外からやって来たものを、おおらかに、素直に受け入れてきた点は、ハワイと似ているかもしれませんね。
――うちの親族の実家のお墓が東京の郊外の霊園にあるんですが、そこではすべての宗教、宗派のお墓が並んでいるんです。仏教の各宗派だけでなく、キリスト教のお墓も混ざっていて。
レイア それはすごいですね。
――そうしたことに誰も違和感持たず、手を合わせて、草むしりをして、お線香あげて帰っていく。他の霊園も同じなのかもしれませんが、そんな何気ない当たり前の風景のなかに、レイアさんの話された世界が息づいている気がします。
レイア その時代その時代、上に立つ人たちは政治的な思惑を持ち、自分たちが意図する方向に持っていこうと思っていたかもしれませんが、庶民にとってそんなことはどうでもよく、ちゃんと雨が降って作物が無事に育ちますようにと神様にお祈りしたり、お盆に提灯をともしてご先祖様をお迎えしたり、目に見えない自然の力を信じ、つながりを感じながら生きてきたんだと思いますよ。
――僕たちの祖先は、自然とつながる回路をもっとしっかり持っていた気がします。それを思い出すにはどうしたらいいと思いますか?
レイア すべては意識です。潜在意識がどうとか難しいことを言っているわけではなく、ただ自分が気づくか気づかないか、意識するかしないか。大事なのは、たったそれだけだから。
――自然とのつながり方については?
レイア 地球上には条件的には過酷な自然も確かにありますし、そこで暮らしていかなければならない人たちもいますが、一方で、私たちのように豊かな自然のなかで暮らせている人もいるわけですから、そうした私たちが自然を受け入れ、自然に感謝し、そこから良いエナジーを放出していかないとおかしいでしょう? 砂嵐のなかで暮らす人たちが自然に対してつらいなって思っているのだとしたら、豊かな緑のなかで暮らす人たちは心地よさを感じ、感謝しないと。
――自然と向き合う、自然を感じるという点では同じだということですね。
レイア 感じる力を持っているのですから、自然の恵みが感じられる場所にいる人が、自然に対して何も感じなかったらバランスがおかしいですよね。すべてはつながっていて、循環しているんですよ。だとしたら、自然の恵みの素晴らしさを知っている日本人は、それを深く感じ、感謝をすることで地球のエナジーを循環させていかないとね。そういう意識を持って毎日を過ごしていくことができれば、世界はもっと穏やかに、平和になっていけるんですよ。
「もう戦わなくてもいいじゃないか」
――自分が感謝しようがしまいが、世の中が変わるわけでもない、自然環境が改善されるわけでもないと思っている人もいると思いますが……。
レイア これだけ自然破壊されて、昔に比べたら空気も水も汚れてしまっているわけでしょう? それを食い止めようと活動するのも大事ですが、残念なことに自然保護団体であっても、戦おうとしますよね?
――戦っていますよね。自然環境は調和や共生のなかで成り立っているはずなのに、活動するほど対立の構造が生まれてしまうところがあります。
レイア 戦いというのは、決して永遠のものではなく、「もうこれ以上傷つけあうのはやめよう」って思えたら終えられるものなんです。意地もあるし恨みもあるから、自分のほうからはやめたくないと思うのが普通かもしれませんが、どちらかが「もういいよ」って許さなければ何も始まらないんですよ。結局、意識なんです。許したほうが負けるのではなく、その時初めて戦いが終わることを知らないと。
――人類はアフリカから始まって、ユーラシア大陸を10万年かけて旅して、その間、生き延びるためにハンティングするだけでなく、人と人どうしが争い合ったり、傷つけあったりしたこともあっただろうと思うんですね。で、その一部のグループが極東の日本列島にたどり着いた時、そこには森が広がっていて、先を進もうにも目の前には海しかない……。
レイア 太平洋だけよね。
――経済人類学者の栗本慎一郎先生が、「もう戦わなくてもいいじゃないか」っていう人たちが集まった場所が日本列島だったのではないかと語っているんです。戦いに負けた人たちが逃げ込むアジール(避難場所)だったのではないかという……。
レイア 戦いに負けたとしても、それは本当の負けじゃなく、新たな歴史の始まりになったんだと思いますよ。負けを受け入れ、戦いをやめることの意味を知るというのは、意識が一段階レベルアップしたということですから。スピっぽい言い方をすれば、次元上昇したということですね(笑)。
――ああ、アセンションしたんですね(笑)。
レイア どこに住んでいても、大自然のなかで生きてきた点は同じですから、私たちの祖先は、ただ戦うだけでなく、調和し共生しながら生きていく知恵だって持っていたはずなんです。いまは後者のほうを選ばなければ、私たちの生活そのものが脅かされ、滅んでしまう時代ですよね?
――ずっと戦ってきた人たちは、頭でそれがわかっていても、急にパターンを変えられないかもしれません。野性を取り戻すと言っても、フォーカスする場所が大事なんでしょうか?
レイア 科学者のようにデータに基づいて学術的な意見が言えたら格好いいけれど(笑)、私ができるのは、愛と安らぎの原点につながる場所に案内して、扉を開けるお手伝いをするということだと思っています。自然を学ぶには、専門的な知識もたくさん必要になってきますし、私がお伝えしているロミロミにしても、解剖学的な知識が不可欠です。でも、理屈をわかっていかなければ、自然の扉が開かないわけではありません。自然の扉は目の前にあるんですよ。
――ほかのどこでもない、ここが自然なんですよね。
レイア だから、その扉があることを伝えて、「開けてごらん、大丈夫だから」って言うのが私の役割なのかなと思っています。扉の前まで連れてってあげられる案内人もいてもいいと思うのよね。
(プロフィール)
レイア高橋 Leia Takahashi
ハワイアン・ドリーム・クリエイションズ(HDC)代表。ハワイを拠点に、「ロミロミ」の伝統的スタイル(マナヴァヒ・スタイル)のカフ(継承者)として、ハワイに古くから伝わる生き方の哲学「フナの教え」に基づいた質の高い教育プログラムを提供。古代ハワイアンの歴史や文化をはじめ、浄化のための瞑想法、呼吸法、チャント詠唱法などを伝えるほか、スピリチュアル・コーディネーターとしてハワイの7つの島や世界各地で聖地ツアーやワークショップを主催。地元ハワイの教育テレビ番組で古代ハワイ文化のスピリチュアリティを伝える講師として活躍している。著書に『癒しのパワースポット』シリーズ、『フラ・カヒコ 魂の旅路』、『宇宙に愛される幸運エナジーの法則』などがある。
https://www.aloha-hdc.com
【ハワイ史年表】
●有史以前
3〜5世紀 ポリネシア人渡来。
10〜13世紀 ポリネシア人大量渡来。
●ハワイ王国の成立
1778年 イギリスよりクック来航。
1810年 カメハメハ1世、ハワイ諸島を統一。
1820年 宣教師団上陸。
1840年 ハワイ国憲法成立。立憲民主制に。
1872年 カメハメハ王家の血筋断絶。
1885年 日布渡航条約が締結。日本からの移民が増加。
●共和国からアメリカ領へ
1894年 ハワイ共和国成立。
1898年 アメリカ合衆国、ハワイ併合。
1941年 日本、真珠湾攻撃。太平洋戦争勃発。
1945年 太平洋戦争終結。
1959年 ハワイ州が成立。ハワイアンブームが起こる。
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